宅建業免許の審査で、まず確認されるのが専任の宅地建物取引士(専任取引士)です。「宅建士の資格を持つ人がいる」だけでは足りず、その方が事務所に常勤し、宅建業に専ら従事していることが求められます。このページでは、必要な人数、専任性、兼業・兼務の扱い、退職・変更時に守る期限を、大阪府の手引に沿って整理します。
専任の宅地建物取引士とは
宅建業者は、事務所ごとに、業務に従事する者5名に対して1名以上の割合で、成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければなりません(宅地建物取引業法第31条の3)。「専任」とは、その事務所に常勤し、専ら宅建業に従事している状態を指します。宅建士の資格を持つ人が社内にいるだけでは足りず、勤務の実態が問われる点が、審査で最も確認される部分です。
必要な人数の数え方
基準は「業務に従事する者5人に1人以上」です。案内所など(契約や申込みを受ける場所)は、1人以上です。大阪府の手引には、従業者の数え方について、次の記載があります。
- 代表者は必ず従業者に含まれる
- 宅建業だけを営む場合は、常勤の役員全員と、庶務・経理の人も含める
- パートも含める
- 建設業など他の事業も営む場合は、業務量で按分する(例として、建設業と宅建業の業務量が1対2で、経理担当が9人なら、宅建業の分は6人)
国土交通省の解釈・運用の考え方には、非常勤の役員を除くという記載があり、大阪府の手引の「常勤役員」と表現が異なります。役員が非常勤の場合や、人数の端数の扱いなど細かな計算は、大阪府の手引や窓口で確認するのが確実です。
専任性(常勤性・専従性)
大阪府の手引は、常勤性を「雇用契約などの継続的な関係があり、事務所の業務時間に従事すること」と説明しています。次のような場合は、常勤性が認められない例として挙げられています。
- 在学中の大学生
- 通勤が不可能な距離に住んでいる
- 他の企業の従業員や公務員
確認のために、出勤簿、賃金台帳、契約書の控え、社会保険の資料などの提出を求められることがあります。
兼業・兼務の整理
| 兼ね方 | 大阪府の扱い(手引・案内より) |
|---|---|
| 他の法人の役員・従業員 | 不可(同じ建物内でも不可) |
| 複数の事務所の専任 | 不可 |
| 監査役 | 不可 |
| 建設業の経営業務の管理責任者・専任技術者 | 原則不可。同一法人・同一場所(同一建物)に限り、勤務実態や業務量を見て個別に判断される |
| 行政書士などの自由業(個人事業) | 同一建物内で常時勤務し、宅建業の営業時間中は宅建業に専任できる場合に限り、申立書の提出を前提に認められる余地がある |
建設業と同一法人・同一場所で兼務する場合は、書式の指定がない申立書を提出し、想定する業務量を具体的に書きます(新規免許申請の場合が対象とされています)。自由業との兼業は、大阪府の指定様式の申立書に、専任宅建士本人が自署して提出します。
申請時に出す書類
- 専任の宅地建物取引士の設置等に係る誓約書(専任宅建士3名ごとに1部)
- 宅地建物取引士証の写し(全員分)
- 専任宅建士設置証明書、従事者名簿
令和6年5月25日以降、専任宅建士の身分証明書と、登記されていないことの証明書は不要になりました。また、宅建士証の有効期間が切れていると受付できません。宅建士の登録の氏名や本籍が申請書と異なる場合は、審査が遅れる旨が手引に記載されています。取引士の登録事項(勤務先など)が変わった場合は、別途、変更登録の申請が必要です。
専任の宅地建物取引士が退職・不足したときの流れ
専任の宅地建物取引士が退職して法定数を下回った場合、次の2つの期限を守る必要があります。混同しやすいので、分けて整理します。
- 2週間以内:後任の設置など、法定数を満たすために必要な措置を執る(宅建業法第31条の3第3項)
- 30日以内:専任の宅地建物取引士の交代・増員・減員について、変更届を提出する(事実が発生してから30日以内)
必要な措置を執らないまま放置すると、宅建業法上の監督処分の対象となるおそれがあります。実際の対応は、次の順に進めるのが基本です。
- ① 退職日(欠員が生じる日)を確認する
- ② 後任の宅地建物取引士を確定し、勤務先の変更登録など必要な手続きを進める
- ③ 2週間以内に、専任の宅地建物取引士を補充する
- ④ 30日以内に、変更届を大阪府へ提出する(保証協会に加入している場合は、協会への届出が必要になる場合があります)
申請前・退職前に確認しておきたいポイント
- 専任の宅地建物取引士が1名だけの場合、その方の退職や休職が事業の継続に直結するため、宅建士の資格者を複数名確保しておく
- 代表者が専任を兼ねる場合、他社の役員を兼ねていないかを、就任前に確認する
- 宅地建物取引士証の有効期間(5年)の満了時期を把握しておく
- 名義だけを借りる形は、実態がなく、発覚すると重い行政処分の対象となるおそれがある
事務所の物件選びも、専任者の要件とあわせて検討する必要があります。詳しくは宅建業免許の事務所要件で解説しています。開業時にかかる保証金については、営業保証金と保証協会の違いをご覧ください。
よくある質問
専任の宅地建物取引士は、代表者本人でもよいですか?
代表者ご自身が宅地建物取引士で、事務所に常勤し宅建業に専ら従事する場合は、専任の宅地建物取引士になることができます。ただし、他の法人の役員や従業員を兼ねている場合は、専任とは認められません。
行政書士など、自由業と兼業しながら専任になれますか?
大阪府の手引では、同一建物内で常時勤務し、行政書士業などが個人事業(業務時間を自分で調整できる状態)で、宅建業の営業時間中は宅建業に専任できる場合に限り、認められる余地があります。この場合は、専任の宅地建物取引士の自由業兼業に関する申立書を提出します。行政書士法人など、申請者以外の法人に雇用されている場合は、専任とは認められません。
資格を持つ人が非常勤の場合、専任として認められますか?
認められません。専任の宅地建物取引士には、事務所への常勤と、宅建業への専従が求められます。週に数日だけ勤務する方や、他社で働きながら名前だけを借りる形は、専任の要件を満たしません。
専任の宅地建物取引士が退職した場合の期限は?
専任の宅地建物取引士の数が法定数を下回った場合は、2週間以内に後任の設置など必要な措置を執る必要があります。加えて、専任の宅地建物取引士を交代・増員・減員した場合は、事実が発生してから30日以内に変更届を提出します。
事務所が複数ある場合はどうなりますか?
専任の宅地建物取引士は、事務所ごとに設置する必要があります。複数の事務所の専任を兼ねることはできません。
専任者になれる人がいるか分からない場合も、まずはご相談ください
専任者の要件や兼業の扱いの確認から、退職・交代時の変更届まで、宅建業の実務に沿ってサポートします。
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